大雨や猛暑のニュースが増える中で、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンは何かの役に立つのか。公の資料で確かめられた範囲を整理します。
対象は、暗号資産に関心があり、気候の問題との関わりを、宣伝ではなく事実で知りたい方です。
この記事で分かるのは、次の 3つです。
- 異常気象について、公の機関が記録していることと、「天候の指数」の意味
- 暗号資産が果たせる役割の候補 4つと、実際の例と限り
- 逆の面(電力の消費)と、個人にできること・できないこと
資料は、2026年10月4日 16時38分までに開いて確かめました。その後に変わることがあります。
はじめにお読みください
この記事は投資の助言ではありません。名前を挙げる会社・団体・通貨・保険・寄付先は、事例として示すもので、勧めるものではありません。
当社(マイクロファンド)は、暗号資産に関するサービスを運営しています。挙げた会社や団体から、依頼も対価も受けていません。数字は、それぞれの資料にある日付のものです。
異常気象は、公の資料でどう記録されているか
気象庁によると、2026年夏(6〜8月)の日本の平均気温は、基準値から+1.02℃でした。1898年の統計開始以降、5番目に高い値です。
夏の平均気温は、長期的に 100年あたり 1.41℃の割合で上がっています(気象庁)。
雨も変わっています。全国のアメダスの観測(1,300地点あたりに換算)で、1時間に 50mm 以上の大雨の年間の発生回数は、最近10年(2016〜2025年)の平均が約340回です。
統計の最初の10年(1976〜1985年)は約226回で、約1.5倍に増えた、と気象庁は説明しています。
世界気象機関(WMO)は 2026年3月23日に、2025年の世界の平均気温が 1850〜1900年の平均より約 1.43℃高かった、と発表しました。
IPCC の報告書(2021年)は、人間が起こした気候変動が、世界のすべての地域で、多くの気象と気候の極端な現象に、すでに影響している、と述べています。
天候の指数とは
天候の指数とは、雨の量・気温・風の速さなど、気象の観測の値から計算する数値のことです。何の値を使い、どう計算するかは、保険の期間が始まる前に決めておきます。
各国の保険の監督当局が集まる国際的な団体 IAIS の文書(2018年6月)は、指数のもとになる値の例に、雨量・気温・風速を挙げています。
具体の例
- 雨量の水準(世界銀行グループの GIIF が、指数の例に挙げているもの)
- 気温・風・降水量・積雪深・日照時間(損保ジャパン日本興亜の名前で出された 2016年12月16日の資料が挙げる気象条件)
- 雨季の降水量(同じ資料にある、タイ東北部の稲作農家向けの、干ばつに備える例)
何に使うか
指数が、前もって決めた条件を満たしたら、前もって決めた額を払います。こうした保険は、インデックス保険やパラメトリック保険と呼ばれます。
実際の損害の額を調べてから払う保険とは、ここが違います。上の 2016年の資料は、損害との因果関係や、実際の損害の額を証明する必要はない、と説明しています。
指数には、気象の値のほかに、地域の収穫量などの実績から計算するものもあります(IAIS の文書)。
限り
実際の損害の額と、支払われる額の間に、差が出ることがあります。これはベーシスリスクと呼ばれます。
IAIS の文書は、悪い出来事が起きても、指数が条件に届かず、支払いが無い場合を挙げています。
指数は、観測のデータに頼ります。同じ文書は、観測所がまばらだと、指数がその土地の状況を映しにくい、という設計者の指摘を載せています。
言葉について
「天候の指数」は、この記事での呼び方です。上の 2016年の資料は「天候インデックス保険」「天候指標」と書いています。
日本の金融商品取引法は、「気象庁その他の者が発表する気象の観測の成果に係る数値」を、「金融指標」の 1つに挙げています(第2条第25項)。
上の 2016年の資料は、同じ特長の商品を、国内では天候デリバティブとして提供している、と書いています。ある商品が法律の上で保険かデリバティブかは、この記事では確かめていません。
候補1:天候などの指数で自動で払う保険
パラメトリック保険は、損害の調べではなく、雨量や収穫量などの指数が、決めた線を越えたかどうかで支払いを決める保険です。
条件と支払いをプログラム(スマートコントラクト)に書けば、請求の手続きを省ける、という考え方です。
実際の例:ケニアの農家 7,000人
保険会社 Lemonade の財団が資金を出した「Lemonade Crypto Climate Coalition」という集まりの例があります。
Global Innovation Lab for Climate Finance の 2023年4月4日のお知らせは、参加した Etherisc が、ケニアの農家 7,000人に作物の保護を提供した、と伝えています。
同じお知らせによると、使われたのは Avalanche のブロックチェーンと、Chainlink の仕組みです。
Lemonade のブログは、この集まりの作物の保護は、雨量などの気象のデータではなく、地域の収穫量の指数をもとにする、と説明しています。
限り
支払われた総額と、その後も続いているかは、今回開いた資料では確かめられませんでした。
指数と実際の損害がずれることがあります。指数が線を越えなければ、損害があっても支払われません。
日本では、保険業は原則として、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ行えません(保険業法 第3条。少額短期保険業は登録、同 第272条)。
ブロックチェーンを使う同じ仕組みの保険で、日本の個人が入れるものは、今回開いた資料では確かめられませんでした。
候補2:災害のときの送金
災害で銀行の窓口や ATM が使えない所へ、ステーブルコインなどのデジタルの価値で支援を届ける、という使い方です。
実際の例:バヌアツの「UnBlocked Cash」
国際 NGO の Oxfam は、2020年のサイクロン「ハロルド」と新型コロナウイルスへの対応として、バヌアツでこの方式の支援を行いました。
Oxfam の説明では、事業は 2019年にバヌアツで始まり、最初の試行は受け取る人 198人と店 33軒でした。その後、35,000人以上に広げた、としています。
Oxfam は、届けるまでの時間が 96% 減り、配る費用が 75% 下がった、としています。これは実施した団体の数字で、第三者の検証は確かめていません。
限り
電気と通信が止まると、送ることも受け取ることもできません。受け取った後に、店で使えるか、現金に替えられるかも要ります。
日本の法律には「電子決済手段」という定義があります。不特定の人への支払いに使えて、売り買いもできる、通貨建てのデジタルの財産などを指します(資金決済法 第2条第5項)。
その売買や交換、他人のための管理などを仕事として行うには、内閣総理大臣の登録が要ります(同 第62条の3)。日本の災害で、暗号資産での寄付を受け付けた公の例は、確かめられませんでした。
候補3と4:排出量の取引のトークン化と、データの記録
カーボンクレジットのトークン化と、その批判
温室効果ガスの削減量を売り買いする枠(カーボンクレジット)を、ブロックチェーンのトークンにして、取引の記録を見えるようにする試みがあります。
クレジットを認証する団体 Verra は、2022年5月25日に、使用済み(無効化済み)のクレジットをもとにトークンを作ることを禁止する、と発表しました。
同じ発表で Verra は、クレジットを登録簿の中で動かせなくした上でトークンにする方法を検討する、としています。
研究団体 CarbonPlan は 2022年4月7日に、Toucan という仕組みを通ったクレジットの約 28%(約600万トン)が、その前の 2年間に使われた記録が無かったなどの事業のものだった、と報告しています。
どちらも 2022年の発表と分析です。その後の Verra の決まりと Toucan の状況は、この記事では確かめていません。
記録が見えることと、削減が本物であることは、別の話です。
電力の取引と、データを記録する仕組み
Energy Web は、エネルギーと環境の市場向けに、申告を検証し、結果をブロックチェーンに記録する仕組みを作っている、と自社のサイトで説明しています。
Powerledger は、電力の個人間の取引(P2P)を、Solana というブロックチェーンの上で行う、と自社のサイトに掲げています。
どちらも事業者の発表です。異常気象の被害を減らした、という第三者の検証は、確かめられませんでした。
逆の面:暗号資産そのものが使う電力
暗号資産は、気候の問題の原因の側にもなりえます。取引を確かめる方式で、使う電力が大きく違います。
- PoW(プルーフ・オブ・ワーク):計算の競争で確かめる。採掘に電力を使う
- PoS(プルーフ・オブ・ステーク):預けた通貨を担保に確かめる。計算の競争が無い
Cambridge 大学の指数は、ビットコインの年あたりの電力を、2026年10月3日の時点で175.0 TWh と推定しています。
推定には幅があり、下限は 81.0 TWh、上限は 304.1 TWh です。
Ethereum は、2022年9月15日に PoW から PoS へ移りました。公式サイトは、今の電力を年あたり約 0.0026 TWh と説明しています。
同じサイトは、移行で電力が 99.988% 以上減った、という CCRI の推定を載せています。
2つの数字は、調べた機関と方法が違います。そのまま割り算して比べるのには向きません。
個人にできること・できないこと
✅ できること
事実は、気象庁などの公の資料で確かめます。使う通貨がどの方式かは、発行元の文書に書かれています。
災害のときは、電気と通信が無いと暗号資産を動かせません。現金や食料などの備えの代わりにはなりません。
⚠️ できないこと・気をつけること
暗号資産を持つだけで、気候の問題に貢献したことにはなりません。持つことは、気温も雨も変えません。
「環境に良い」という説明は、発行元の言葉だけでは確かめられません。第三者の資料があるかを見ます。
よくある質問
Q. 暗号資産は、異常気象を減らせますか?
減らせる、と確かめられた資料はありませんでした。確かめられたのは、被害の後のお金の流れや、記録の仕組みに使われた例までです。
Q. 日本で、天候の指数で払う暗号資産の保険に入れますか?
確かめられませんでした。この記事の例は海外の試行で、日本の個人向けの商品ではありません。
Q. ビットコインは、環境に悪いのですか?
電力を多く使うことは、推定の数字が示しています。その電力が何から作られているかは、この記事では確かめていません。
まとめ
- 異常気象は、気象庁・WMO・IPCC の資料で、数字として記録されている
- 役割の候補は 4つ。保険と送金には実際の例があるが、規模と効果の検証は限られる
- カーボンクレジットのトークン化には、認証の団体による禁止と、流れ込んだ枠への批判がある
- 暗号資産そのものも電力を使う。方式で大きく違い、持つだけでは気候に貢献しない
暗号資産が、いま何円かを確かめるなら
この記事に出てきたビットコインや Ethereum が、いま何円・何ドルかは、当社の Crypto Rate Viewer で確かめられます。
通貨ごとのページで、円建ての過去の価格のグラフ(1日〜365日)も見られます。ログインは要りません。
表示する価格は参考値で、実際の取引のレートとは違うことがあります。売り買いを勧めるものではなく、この先の価格を示すものでもありません。
この記事の出どころ(2026年10月4日に開いたもの)
- 気象庁「日本の季節平均気温」夏(6〜8月)
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sum_jpn.html - 気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html - 世界気象機関(WMO)の発表 2026年3月23日
https://wmo.int/news/media-centre/earths-climate-swings-increasingly-out-of-balance - IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会 政策決定者向け要約(2021年)
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/chapter/summary-for-policymakers/ - Lemonade のブログ「Introducing the Lemonade Crypto Climate Coalition」
https://www.lemonade.com/blog/crypto-climate-coalition/ - Global Innovation Lab for Climate Finance のお知らせ 2023年4月4日
https://www.climatefinancelab.org/news/etherisc-protects-7000-kenyan-farmers-using-blockchain-technology/ - Oxfam「UnBlocked Cash Project」
https://www.oxfam.org/en/unblocked-cash-project-using-blockchain-technology-revolutionize-humanitarian-aid - Verra の発表 2022年5月25日
https://verra.org/verra-addresses-crypto-instruments-and-tokens/ - CarbonPlan「Zombies on the blockchain」2022年4月7日
https://carbonplan.org/research/toucan-crypto-offsets - Energy Web の公式サイト
https://energyweb.org/ - Powerledger の公式サイト
https://powerledger.io/ - Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index(Cambridge Centre for Alternative Finance)
https://ccaf.io/cbnsi/cbeci - ethereum.org「Ethereum energy consumption」
https://ethereum.org/en/energy-consumption/ - ethereum.org「The Merge」
https://ethereum.org/en/roadmap/merge/ - 保険業法 第3条・第272条(e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105 - 資金決済に関する法律 第2条・第62条の3(e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/421AC0000000059 - IAIS「Issues Paper on Index-based Insurances」2018年6月
https://www.iais.org/uploads/2022/01/180618-Issues-Paper-on-Index-based-Insurances-particularly-in-Inclusive-Insurance-Markets.pdf - Global Inclusive Insurance Facility(世界銀行グループ)「What is index insurance?」
https://www.globalinclusiveinsuranceforum.org/faq/what-index-insurance - 損保ジャパン日本興亜「東南アジアにおける農業従事者向け天候インデックス保険の展開」2016年12月16日(環境省のサイトに掲載)
https://www.env.go.jp/content/900530188.pdf - 金融商品取引法 第2条第25項(e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025
この記事は、2026年10月4日 16時38分までに開いた資料にもとづきます。その後に、内容が変わることがあります。
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