日本の家計が持つ金融資産は、2026年6月末で約2,519兆円でした。統計が残る1997年末以降で、いちばん大きい額です。
日本銀行が2026年9月17日に公表した資金循環統計(2026年第2四半期の速報)の数字です。この記事は、自分の資産の置き場所を見直したい個人の方に向けて書いています。
この記事で分かるのは、次の3つです。
- 家計の金融資産は、何にどれだけ置かれているか
- 1年で増えた約251兆円は、どこから来たか
- 自分の資産を、同じ物差しで見直す手順
数字は速報で、あとで改定されることがあります。以下、兆円は四捨五入した値です。
家計の金融資産は、1年で11%増えた
6月末の約2,519兆円は、3月末の約2,406兆円から3か月で4.7%、1年前の約2,269兆円から11.0%増えています。
家計の借入(住宅ローンなど)は約416兆円です。資産から借入を引いた額は約2,103兆円で、こちらも1年で12.5%増えました。
ただし、これは日本の家計全体の合計です。1人ひとりの資産が同じだけ増えたわけではありません。何を持っていたかで、増え方は大きく違います。
半分近くは現金・預金で、1年で0.5%しか増えていない
内訳を見ると、いちばん大きいのは現金・預金の約1,132兆円で、全体の約45%です。
現金・預金は1年で0.5%しか増えていません。増えた約5兆円は、1年に新しく預けた額とほぼ同じです。預金の額は、値上がりでは増えないからです。
一方、投資信託などの価格が動く資産は約679兆円で、1年で43.9%増えました。保険・年金は約586兆円で、3.2%の増加です。
増えた約251兆円のうち、約9割は値上がりなど
資金循環統計は、残高とは別に、1年にいくら買ったか・預けたか(取引)も出しています。直近4四半期の取引を足すと、家計が新しく入れたお金は約25兆円でした。
残りの約226兆円は、取引ではない変化です。多くは、持っていた資産の値上がりです。
価格が動く資産だけで見ると、1年の増加約207兆円のうち、買い増しは約9兆円です。
値上がりで増えた分は、値下がりすれば減ります。残高が過去最高でも、同じ額が守られているわけではありません。
株式に動いた金額は、1年で約5兆円の売り越し
日銀の区分「株式等」(上場していない会社の株式や出資金も含む)の残高は、6月末で約486兆円、家計の金融資産の約19%です。1年で47.0%、約155兆円増えました。
一方、1年の取引を足すと、家計は株式等を約5兆円の売り越しでした。四半期ごとに見ると、4期とも売り越しです。
売ったのに残高が増えたのは、値上がりが約160兆円あったためです。株式に新しく動いたお金は、残高の増え方から受ける印象よりずっと小さいと分かります。
投資信託は反対に、1年で約14兆円の買い越しでした。株式を直接持つ分は売り、投資信託は買うという動きです。
100兆円が株式市場に流れると日経平均が15万円程度になるのは本当か
「家計の預金のうち100兆円が株式市場に流れれば、日経平均は15万円程度になる」という見方があります。資金循環統計の数字で、この見方の前提を確かめます。
6月末の上場株式の時価は、市場全体で約1,386兆円です。100兆円はその約7%、家計の現金・預金の約9%にあたります。
6月末の日経平均の終値は約70,062円で、15万円はその約2.1倍です。日経平均が時価総額と同じ割合で動くと置くと、時価は約1,580兆円増える計算です。
つまりこの見方は、入ったお金1円で、時価が約16円増えることを前提にしています。日経平均は225銘柄から計算する指数なので、実際には時価総額と同じ割合では動きません。
入ったお金より時価が大きく動くことはあります。株価は、売り手が手放してもよい値段で決まるからです。ただし何倍になるかは時期や売り手の動きで変わり、決まった倍率はありません。
この記事の数字でも、家計は株式等を1年で約5兆円売り越しましたが、残高は約155兆円増えました。上場株式の約35%は海外の投資家が持ち、家計のお金だけで株価は決まりません。
買った人が払ったお金は売った人に渡り、市場の中にたまるわけではありません。投資信託には海外の資産に投資するものもあり、買い越しがすべて国内の株式に向かうわけでもありません。
倍率ごとの試算:研究の推計なら約9.5万円
米国の研究(Gabaix・Koijen、2021年)では、株式に入ったお金1ドルで、市場全体の時価が約5ドル増えると推計されています。
6月末の時価と日経平均を起点に、100兆円が入ったときの日経平均を倍率ごとに試算すると次のとおりです。
- 倍率1倍(入った額だけ時価が増える):約7.5万円
- 倍率5倍(米国の研究の推計):約9.5万円
- 倍率約16倍:15万円
研究の推計を当てはめた試算の値は約9.5万円です。15万円に届くには、その3倍を超える倍率が要ります。
この試算は、100兆円が短い期間にまとめて入り、ほかの条件が変わらない場合です。企業の業績や金利、海外の投資家の売買で、実際の値は大きく変わります。先の値の予想でも、売買の推奨でもありません。
海外の資産も、円で見て大きく増えた
家計が持つ海外の証券(対外証券投資)は約53兆円で、1年で31.2%増えました。1年の買い増しは約0.3兆円なので、増えた分のほとんどは円で見た価格の変化です。
外貨預金は約8兆円で、1年で6.1%増えています。円以外で持つお金は、まだ全体の数%です。
海外の資産は、外国での値動きに加えて為替でも円での額が変わります。円安なら増え、円高なら減ります。
自分の資産を、同じ物差しで見直す
統計と同じ分け方で、自分の資産を並べてみると、どこに偏っているかが分かります。
- 資産を、現金・預金/価格が動く資産/保険・年金/円以外、に分けて書き出す
- 1年前の額と並べ、項目ごとに何%増えたかを出す
- 増えた分を、入れたお金と値上がりに分ける
- 円以外で持つ割合と、値下がりしたら減る額を確かめる
3つめが大事です。入れたお金を引くと、値上がりで増えた分だけが残ります。その分は、値下がりで同じだけ減る可能性があります。
計算例です。投資信託が1年で100万円から150万円になり、その間に30万円を買い足したとします。増えた50万円のうち、値上がりは20万円です。
預金が300万円から310万円になり、10万円を預けていたなら、値上がりは0円です。この2つを並べると、値下がりで減りうるのは投資信託の側だけだと分かります。
✅ うまくいきやすい見方
年に1回、同じ月末の額で並べると比べやすくなります。日銀の統計も、毎年6月末の速報が9月に出ます。
⚠️ よくあるつまずき
入れたお金を含めたまま「増えた」と見ることです。預金は入れた分しか増えないので、比べると実力より小さく見えます。
暗号資産は、この統計の項目に無い
家計の金融資産の表には、暗号資産の項目がありません(今回の速報の表を確認)。暗号資産を持っているなら、自分の資産表には円に直して自分で足す必要があります。
円に直すときは、日付をそろえます。6月末で比べるなら、6月末の価格で換算します。暗号資産は値動きが大きく、日付がずれると額が大きく変わるからです。
区分は価格が動く資産に入れます。ドル建ての価格なら、海外の証券と同じく、為替でも円での額が変わります。USDC のようなドル連動の通貨も、円で見れば為替の分だけ動きます。
よくある質問
Q. 1人あたりにすると、いくらですか?
この記事では出していません。合計を人数で割った平均は、多く持つ人に引っ張られ、ふつうの家計の姿とは離れるためです。
Q. 次の数字はいつ出ますか?
資金循環統計は、四半期ごとに約3か月後に出ます。9月末の数字は、例年12月に公表されます。
Q. 預金を減らしたほうがよいですか?
この記事は統計の説明で、特定の資産を勧めるものではありません。すぐ使うお金と、値下がりしても待てるお金を分けて考えます。
まとめ
- 家計の金融資産は2026年6月末で約2,519兆円、1年で11.0%増えた
- 約45%は現金・預金で、1年で0.5%しか増えていない
- 増えた約251兆円のうち、新しく入れたお金は約25兆円だけ
- 自分の資産も、入れたお金と値上がりを分けて見直す
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出典:日本銀行「資金循環統計 2026年第2四半期の速報」(2026年9月17日公表)、日本銀行 時系列統計データ「家計金融資産」(2026年9月26日に確認)。兆円は億円単位の値を四捨五入。売買の推奨ではありません。
2026年10月9日に、試算の節の言い回しを直しました。数字は取り直していません。
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