取引所で買った暗号資産(仮想通貨)を外部ウォレットへ出庫したら、確定損益が急に大きなマイナスになった。売ってもいないのに、なぜでしょうか。
この記事では、損益がずれて見える仕組みと、出庫を含めて損益を正しく読む手順を、例の数字で説明します。
対象は、複数の取引所やウォレットで暗号資産を動かしながら、損益を正確につかみたい個人の方です。2026年9月15日時点の情報に基づきます。
出庫した月に、確定損益が急に減って見える
取引所の損益画面や、取引履歴から作った表計算では、確定損益を次の式で出すことがよくあります。
確定損益 = 売り − 買い + 保有分の取得原価 − 手数料
取得原価は、いま持っている分を買うのにかかった金額です。まだ売っていない分の購入額を足し戻すことで、売った分の損益だけを取り出しています。
この式は、取引所の中だけで売買しているあいだは正しく働きます。ずれるのは、買った暗号資産を取引所の外へ移したときです。
例で確かめます。数字は説明用に丸めた例で、実際の取引や成績ではありません。
- ETH を1枚40万円で3枚買う(買い 120万円)
- 1枚を50万円で売る(売り 50万円)
- 1枚を外部ウォレットへ出庫する
- 取引所には1枚が残る(取得原価 40万円)
手数料は0円とします。式に入れると、50万 − 120万 + 40万 − 0 = −30万円です。
しかし実際に売ったのは、40万円で買った1枚を50万円で売った分だけです。本当の確定損益は+10万円で、40万円ずれています。
原因は「買った分は、売ったか今も持っている」という前提
ずれの原因は、式が置いている前提にあります。買った暗号資産は、売ったか、取引所に今も持っているかのどちらか、という前提です。
出庫すると、その分は取引所の残高から消えます。売っていないので、売りにも入りません。買いの金額だけが引かれたまま、足し戻す相手がなくなります。
その結果、出庫した数量の購入額が、まるごと損失のように見えます。移した数量が多いほど、ずれも大きくなります。
取引所の計算が誤っているというより、取引所からは出庫先の様子が見えないことが原因です。売ったのか、ウォレットで持ち続けているのかは、本人にしか分かりません。
一度に大きく動くとは限りません。毎月少しずつウォレットへ移していると、確定損益も毎月少しずつ下がり、売買の成績がじわじわ悪化しているように見えます。
出庫は売却ではなく「移動」として足し戻す
直し方は、出庫を売却ではなく、自分の財布どうしの移動として扱うことです。出庫した数量の取得原価を、確定損益に足し戻します。
ただ、出庫した1枚がいくらで買ったものかを1つずつ追うのは困難です。そこで平均購入単価で近似し、足し戻す数量は次の2つの少ない方とします。
- 出庫 − 入庫:外へ出した数量から、外から入れた数量を引いたもの
- 買い − 売り − 保有:買ったのに、売っておらず取引所にも無い数量
少ない方をとるのは、買っていない分まで足し戻さないためです。どちらかが0以下なら足し戻しません。例では2つとも1枚なので、1枚 × 40万円を足し戻します。
1つめで入庫を引くのは、出庫した1枚を同じ取引所へ戻したときに、出庫と入庫が打ち消し合い、足し戻しが要らなくなるためです。
この方法でも分からないこと
足し戻しで出庫のずれは直りますが、限界もあります。数字を読むときは、次の3点を頭に置いてください。
- 外から入庫して売った分:取得原価が分からず、売却額がそのまま利益に見えます。
- 平均単価の近似:買った時期で価格が違うと、実際に移した分の原価とは差が出ます。
- 出庫先での値動き:ウォレットに移した分の含み損益は、取引所の数字に入りません。
取引所をまたぐと、1つめの限界が効いてきます。例の1枚を別の取引所へ移して50万円で売ると、移し先では原価が分からず+50万円に見えます。
移し元は足し戻しで損失が消えるので、2つを足すと+50万円です。本当は+10万円なので、移し元で足し戻した40万円を、移し先の利益から差し引いて読みます。
出庫を含めて損益を確かめる手順
- 入出庫の履歴で、出庫した日と数量を確かめる
- 確定損益が大きく動いた月と、出庫した月が重なっていないか見る
- 出庫した数量 × 平均購入単価で、足し戻す金額の目安を出す
- 外から入庫して売った分は、その原価の分だけ利益を割り引いて読む
- ウォレットに移した分の残高と時価は、ウォレット側で別に確かめる
取引所とウォレットの数字を並べてはじめて、全体の損益が見えます。片方の数字だけで判断しないことが大切です。
大まかな検算もできます。置き場所を問わず持っている暗号資産の時価に、引き出した日本円を足し、入れた日本円を引くと、全体の損益の目安になります。
うまくいきやすい見方と、よくあるつまずき
✅ うまくいきやすい見方
出庫・入庫した日と数量を、取引所ごとに記録しておく見方です。
確定損益が動いたとき、売買の結果なのか、移動によるずれなのかをすぐ切り分けられます。
⚠️ よくあるつまずき
出庫した月の大きなマイナスを売買の失敗と受け取り、売買の方針まで変えてしまうことです。
反対に、移し先で売った分の大きな利益を、そのまま成績と受け取ってしまうこともあります。
まとめ
取引所から外部ウォレットへ出庫すると、よくある確定損益の式では、出庫した分の購入額が損失に見えます。
出庫は売却ではなく移動です。出庫した数量の取得原価を平均購入単価で足し戻すと、売買による損益に近づきます。
外から入れて売った分は原価が分からないので、利益を割り引いて読みます。取引所とウォレットの数字を並べて見ることが、全体の損益をつかむ近道です。
💡 ウォレットへ移した分を、ウォレットの側で確かめるなら
Ethereum か Solana のウォレットに移した分は、Crypto Wallet Viewer で、残高と入出金を円と USDC の時価つきで見られます。見るだけの道具で、秘密鍵は要りません。
取引所の確定損益の表示は、この道具では変わりません。時価は参考値です。アカウント登録が要り、利用は有料です。
(本記事は2026年9月15日時点の情報に基づく一般的な解説で、数字はすべて説明用の例です。暗号資産は価格が大きく変動し、投じた資金を失う可能性があります)
(特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。入出庫と売買の記録は残しておき、必要なら専門家に確認してください)
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