Web2 と Web3 の違い・Web2 の問題点・Web3 が生まれた背景・Web3 を実現するためにやること

はじめに

「Web3」という言葉は2021年ごろから一気に広まりましたが、「結局 Web2 と何が違うのか」「なぜわざわざ新しい仕組みが必要だったのか」「自分が何から始めればいいのか」が曖昧なまま、流行語として消費されてきた面があります。

本記事は、Web2 と Web3 の違いを構造から整理し、Web2 が抱える問題点、Web3 が生まれた歴史的背景、そして個人・事業者が Web3 を実際に「動かす」ために踏むべきステップを、1本の記事としてつなげて解説します。

本記事は、マイクロファンドが Ethereum・Solana 周辺のプロジェクトやウォレット・取引所・分散型アプリを日々観察してきた経験と、Ethereum Foundation・W3C・国内外の規制当局が公開している一次情報を踏まえて執筆しています。情報は2026年5月14日時点のものです。

この記事の対象読者

本記事は、次のような方を想定しています。

  • 「Web3」「ブロックチェーン」という言葉は聞いたことはあるが、Web2 との違いを自分の言葉で説明できない方
  • SNS・クラウド・決済プラットフォームに依存する事業を運営していて、「規約変更や凍結リスク」をどう減らせるか考えている事業者
  • 暗号資産投資ではなく、Web3 を「インフラ」として理解・活用したい方
  • 自社サービスへの Web3 要素の取り込み(決済・ID・コミュニティ)を検討しているプロダクトマネージャー・エンジニア
  • これから Web3 関連の事業立ち上げ・人材採用を進めたい経営者

逆に、本記事は特定のトークンの値動き予想や、短期投機を勧めるものではありません。「Web3 がなぜ必要で、何から手を付ければ実需に結びつくのか」を整理するための入門記事として位置付けています。

Web1・Web2・Web3 の違いを一言で

まず大きな流れを整理します。Web の進化はよく次の3段階で説明されます。

  • Web1(〜2004年ごろ):「読む」中心の Web。HTML の静的ページで、企業や個人が情報を発信し、ユーザーは閲覧者として受け取るだけだった時代。
  • Web2(2005年〜現在):「読む+書く」Web。SNS・ブログ・動画投稿などにより、ユーザーが自分でコンテンツを発信できるようになった一方で、発信の場(プラットフォーム)は GAFA など少数の大企業に集中した時代。
  • Web3(2018年ごろ〜進行中):「読む+書く+所有する」Web。ブロックチェーンとウォレットによって、ユーザー自身がデータ・ID・通貨・コンテンツを所有し、プラットフォームを通さずに直接やりとりできる Web。

「Web3 は分散化された Web」と言われますが、より実務的に言えば「ユーザーが自分の鍵で資産と ID を持ち歩ける Web」と理解した方が正確です。

Web2 と Web3 の構造の違いWeb2(読み・書き、中央集権)プラットフォームユーザーユーザーユーザーデータ・ID・通貨はプラットフォームが保有規約変更・凍結は一方的Web3(読み・書き・所有、分散)ブロックチェーンウォレットウォレットウォレットデータ・ID・通貨は本人がウォレットで保有ルールはコードで自動執行
図1:Web2 はプラットフォーム集中、Web3 はユーザーが自分の資産・ID を直接保有する

対比表:Web2 と Web3 を11の軸で比べる

言葉のうえでの違いは曖昧になりがちなので、事業設計に必要な観点を11軸でまとめます。「自社・自分のユースケースは、どの軸が一番効くのか」を見極めるためのチェックリストとして使ってください。

観点 Web2 Web3
データ所有 プラットフォームが集約・保有 ユーザーがウォレット/自前ノードで保有
ID・認証 サービスごとのメール/パスワード、ソーシャルログイン ウォレット署名、DID、Sign-In with Ethereum
通貨・決済 銀行・カードネットワーク経由の法定通貨 暗号資産・ステーブルコインで直接送金
価値の移転 仲介者(銀行・PSP)を必ず通る P2P でオンチェーン送金
アプリの稼働基盤 企業所有のサーバ・クラウド ブロックチェーン上のスマートコントラクト
ストレージ AWS S3 / GCS / R2 など中央クラウドに集中 IPFS / Arweave / Filecoin など分散ストレージ
ガバナンス 運営企業の経営判断(規約変更も一方的) DAO・トークン保有者による投票
信頼の根拠 運営企業のブランド・規制ライセンス 公開コード+暗号学+ノードの分散性
越境性 国の規制・銀行ネットワークに強く依存 国境にほぼ依存せず24/365稼働
透明性・監査性 ブラックボックス(運営の内部処理) オンチェーンで誰でも検証可能
凍結・没収リスク プラットフォーム判断で即時に凍結可能 秘密鍵を持つ本人以外は一方的に動かせない

この表を見て、自分の事業・生活において「上から3つ以上 Web2 のままだと困る」軸があるなら、そこが Web3 化の第一候補になります。逆に Web2 のままで十分な軸まで無理に Web3 に寄せる必要はありません。

Web2 の問題点

Web2 は便利な仕組みを大量に生みました。一方で、サービスを長く運営してきた事業者や、プラットフォームに依存して活動するクリエイター・支援者が直面してきた問題は決して小さくありません。マイクロファンドが観察してきた典型的な問題点を整理します。

1. プラットフォーム依存と一方的な規約変更

SNS のリーチや動画プラットフォームの収益分配は、プラットフォーム側のアルゴリズム変更や規約改定で大きく変動します。「昨日まで届いていた投稿が今日から半分も届かなくなる」「収益化条件が変わって突然マネタイズが止まる」といったことが、事前協議なしに起こり得ます。

2. アカウント凍結・データ消失リスク

Web2 では、アカウントとデータの所有権は実質的にプラットフォーム側にあります。規約違反の判定が誤っていても、復旧には時間がかかり、そもそも復旧されないこともあります。長年積み上げたフォロワー・売上履歴・コンテンツが一夜で消える例は珍しくありません。

3. データの抱え込みと利益の偏在

ユーザーが生み出した投稿・検索履歴・購買履歴は、プラットフォームが集約し、広告ターゲティングや AI 学習に利用されます。そこから生まれる経済価値の大半はプラットフォームに帰属し、ユーザーには「無料で使える」という対価しか戻ってきません。

4. 国境・通貨の壁が依然として大きい

越境送金・越境決済は、銀行ネットワーク・カード会社・国の規制を通すため数日〜手数料数%が当たり前に発生します。新興国の通貨不安・資本規制下にあるユーザーにとっては、「自分の資産を自分の意思で動かす」こと自体が難しい状況が続いています。

5. 検閲耐性の弱さ

政府・プラットフォーム双方からの検閲圧力に対し、Web2 のサーバ集中型アーキテクチャは構造的に弱い面があります。報道・記録・市民活動の自由を守る観点でも、「単一の事業者・国に依存しない情報基盤」が必要だという議論が広がりました。

6. ID と認証の分断・流出

サービスごとにメールアドレスとパスワードを登録する Web2 のモデルは、情報漏えいを誘発し、ユーザーは複数のパスワード管理に疲弊しています。ソーシャルログインは便利ですが、それ自体がプラットフォーム依存をさらに深めます。

7. ストレージの中央集権とデータ消失リスク

Web2 のストレージは、AWS S3/Google Cloud Storage/Cloudflare R2/Azure Blob など、ごく少数の大手クラウド事業者に集中しています。アプリのデータ、ユーザーが投稿した画像・動画、業務ファイル、ブロックチェーン関連サービスですらフロントエンドは結局これらに依存しているケースが大半です。この集中構造は、便利な反面、次のような構造的な問題を抱えています。

  • 事業者側の判断で削除・非公開化される:規約違反の判定(誤検知含む)や、政府・第三者からの要請で、個別ファイルが一方的に非公開化・削除される。公的な議論を残したい記事や、規制グレー領域の素材は、特に影響を受けやすい。
  • リージョン障害でアクセス不能:クラウドのリージョン単位での障害が発生すると、世界中の利用者が同時に影響を受ける。「自分のサーバは無事なのに、依存しているクラウドが止まっていて何もできない」という構図が定期的に繰り返されてきた。
  • エグレス料金とロックイン:クラウドからデータを外に出すときの転送料金(エグレス)が高く、「移行したくても費用が壁になって動けない」状態が生まれる。特に動画・大規模ログ・AI 学習データはコストが跳ね上がりやすい。
  • 存在証明(タイムスタンプ)が弱い:「このファイルがいつ存在したか」を第三者に証明する仕組みが標準では用意されていない。事業者がデータベースを書き換える可能性を完全には排除できない。
  • 事業者の撤退・破綻でデータが消える:ストレージサービス自体やそれを使うアプリ事業者が撤退すると、ユーザーは自前バックアップを取っていない限り、コンテンツを失う。オンラインサービス終了で写真・記事・購入履歴が消えた例は枚挙にいとまがない。
  • 「URL は変わる」が前提のため、参照が腐る:Web2 のリンクは数年もすれば 404 になる「リンク切れ」が当たり前で、学術・ジャーナリズム・歴史的記録の保全という観点では脆弱。

Web3 ではこの問題に対し、IPFS(コンテンツアドレッシングによる分散配信)Arweave(永続保存に最適化された分散ストレージ)Filecoin(経済的インセンティブ付きの分散ストレージ市場)Storj/Sia などのレイヤーが台頭してきました。ファイルの中身そのものをハッシュ(CID)で指す方式により、「URL ではなく内容で参照する」ことが可能になり、リンク切れ・改ざん・特定事業者依存の問題が構造的に緩和されます。ENS と組み合わせれば、人間に読める名前(例:docs.example.eth)から分散ストレージ上のコンテンツに直接アクセスする UX も実現できます。

もちろん、分散ストレージにも「初回アクセス時の遅延」「ピン留め運用の手間」「永続コストの一括前払い」といった現実的な課題があり、すべてを Web3 ストレージに移すべきという話ではありません。ただし「消えたら困る/改ざんを許したくない/第三者検証可能にしたい」コンテンツに関しては、Web3 ストレージとのハイブリッド設計が現実解になってきています。

Web3 が生まれた背景

Web3 は、ある日突然出てきたバズワードではなく、Web2 の限界に対する解決策として段階的に積み上げられてきたものです。主要な節目を時系列で整理します。

1. 暗号学的通貨の登場(2008〜2013年)

2008年にサトシ・ナカモト名義で公開された Bitcoin のホワイトペーパーは、「特定の管理者がいなくても、改ざんされない取引履歴を維持できる」ことを示しました。リーマン・ショック直後という時代背景もあり、「中央銀行・大手金融機関に依存しない通貨」が現実的な選択肢として受け止められました。

2. スマートコントラクトと Ethereum(2014〜2017年)

2015年に稼働を開始した Ethereum は、ブロックチェーン上で任意のプログラム(スマートコントラクト)を動かせるようにしました。これにより、通貨だけでなく「契約」「組織」「アプリ」自体を中央サーバなしに動かす技術基盤が整いました。「Web3」という言葉自体は、Ethereum の共同創業者であるギャビン・ウッドが2014年に提唱しています。

3. DeFi と NFT のブレイク(2020〜2021年)

2020年の DeFi サマーで、銀行を介さない貸借・両替・流動性提供が実用段階に入り、2021年には NFT がアート・ゲーム・コミュニティ運営の文脈で爆発的に普及しました。「Web3 はインフラ実験段階」から「実際にユーザーがお金とコンテンツを動かす場」へと性格が変わりました。

4. 各国規制の整備(2023〜2026年)

EU の MiCA、米国のステーブルコイン規制、日本の暗号資産・電子決済手段に関する法整備など、「Web3 は無法地帯」という時代を抜け、事業として真っ当に取り組むためのルールが整いつつあります。2026年5月時点では、日本でもステーブルコイン・セキュリティトークン・暗号資産取引所の制度が一定の成熟を見せ、事業者が法的予見可能性を持って Web3 に踏み込みやすい環境が整ってきました。

5. 周辺技術(L2・AA・ENS など)の成熟(2024〜2026年)

Layer 2(Optimism・Arbitrum・Base など)による低コスト化、Account Abstraction による UX 改善、ENS による人間に読める名前空間、Sign-In with Ethereum による Web3 ログインなど、「使える Web3」を支える周辺技術がここ数年で一気に整いました。2021年当時とは違い、ガス代・操作の難しさ・名前の覚えにくさといった初期の Web3 の壁は大きく下がっています。

Web3 を実現するためにやること

「Web3 を理解した」と「Web3 を動かした」の間には大きなギャップがあります。言葉を覚えるだけでは Web3 にはなりません。個人と事業者が、それぞれ何から始めればよいかを整理します。

Web3 を実現するために個人・事業者が踏む4ステップ①ウォレット作成秘密鍵は自分で管理シードフレーズを保管ここが「自己主権」の出発点②法定通貨の橋渡し取引所・ステーブルコインで JPY ↔ 暗号資産税務・本人確認もセットで設計③ID・名前を確保ENS などで 「自分の名前」を取得プロフィール・送金先・サイトを紐付ける④dApp を使う/作るDeFi・NFT・DAO・分散型 SNS に接続事業者は dApp を提供する側にもなれる
図2:Web3 を「言葉」ではなく「動かす」ための4ステップ

個人がやること

  1. セルフカストディのウォレットを作る:MetaMask・Rabby・Phantom などのウォレットを導入し、シードフレーズをオフラインで安全に保管する。「自分の秘密鍵を自分で管理する」ことが Web3 の出発点であり、ここを取引所任せにしている間は Web3 を体験したとは言いにくい。ウォレットの選び方は別記事の Phantom ウォレット解説も参照してください。
  2. 少額で実際に送金・dApp 操作を試す:ステーブルコインを少額買って、別のウォレットに送る、Uniswap などで両替する、NFT を1枚試しに買ってみるなど、「自分のお金で自分の操作」を行うことで、初めて Web3 の感覚が掴める。
  3. ENS などで自分の名前を確保する:ウォレットアドレスを「alice.eth」のような人間に読める名前に置き換える。詳細は ENS(Ethereum Name Service)解説を参照。
  4. 税務と本人確認をセットで設計する:日本では暗号資産の損益は雑所得(または事業所得)として扱われ、計算ツール(Cryptact・Gtax 等)の併用が現実的。「触っているだけで税務が崩壊する」状態は避ける。
  5. 秘密鍵を失う・盗まれることを前提に運用する:ハードウェアウォレット(Ledger・Trezor 等)の導入、Safe などのマルチシグの利用、フィッシング対策、シードフレーズの分散保管などを最初から組み込む。

事業者がやること

  1. 「自社の何を Web3 化したいか」を明確にする:決済か、ID か、コミュニティか、コンテンツの所有権か、ターゲットが曖昧なまま「ブロックチェーンを使う」と言ってもプロジェクトは進まない。
  2. 規制と税務を最初に確認する:暗号資産交換業・資金移動業・電子決済手段等取扱業・前払式支払手段など、日本の規制区分は細かい。法務・税務の専門家と事前にすり合わせるのが安全。
  3. ウォレットとログイン体験を設計する:Web3 ネイティブのユーザーだけでなく、既存ユーザーがウォレットを意識せずに使える UX(Account Abstraction、メールログイン、パスキー連携)を選択肢として持っておく。
  4. 運用に耐える鍵管理体制を作る:マルチシグ・コールドストレージ・役員交代時の鍵更新手順・緊急停止権限など、「鍵を失ったら会社の事業が止まる」状態を避ける。
  5. コミュニティと法務を同時に走らせる:Discord や Telegram でのコミュニティ運営は事業価値そのものになる一方、金商法・景表法・特定商取引法・各国規制との整合性も並行して詰める必要がある。

成功例と失敗例

マイクロファンドがこれまで観察してきた中で、Web3 をうまく取り込んだ事業者・個人と、途中で止まってしまった事業者・個人の典型パターンを整理します。(特定の個人・企業名は挙げず、傾向として整理しています)

うまくいったパターン

  • 既存サービスの「決済レイヤー」だけ Web3 化した事業者:クリエイター支援サイトが、サブスク決済の一部を USDC などのステーブルコインに対応。海外ユーザーからの少額決済を、カード手数料・為替手数料抜きで受け取れるようになり、粗利と海外比率が同時に伸びた。「全部 Web3 化」ではなく「効果が大きい1点だけ」を選んだのが勝因。
  • NFT を会員証として使ったコミュニティ運営:オンラインサロン的なコミュニティが、会員 NFT をウォレットに発行。Discord などで NFT 保有者だけが入れるチャンネルを用意し、「会費ではなく所有」というモデルを実現。NFT を二次流通市場で売れるため退会コストが低く、結果的に新規参加のハードルも下がった。
  • 分散型 ID で B2B 認証を簡素化した SaaS:取引先企業ごとに ID 発行・棚卸しをしていた SaaS が、ウォレット署名による認証(Sign-In with Ethereum)に移行。アカウント発行・削除の事務コストが下がり、監査ログも明確になった。
  • 個人が ENS と分散型サイトでポートフォリオを構築:エンジニアやアーティストが「name.eth」を取得し、Mirror 等で記事を発信、Twitter・GitHub と紐付け。プラットフォームのアルゴリズム変動に左右されにくい「自前のオンラインプレゼンス」を確立した。

うまくいかなかったパターン

  • 「Web3 をやる」だけが先行したプロジェクト:対象ユーザー・解決する課題が曖昧なまま、トークン発行・NFT 販売を急いだ結果、初期売上は出たが二次的なエンゲージメントが続かず、コミュニティが半年で衰退。「先にトークンありき」では本業のサービス力が育たない。
  • 取引所任せのまま「Web3 を使った」と勘違い:ユーザーがすべての資産を取引所に置いたまま、ウォレットを一度も触らずに「自分は Web3 ユーザー」と思っているケース。取引所が止まった瞬間に資産にアクセスできず、結局 Web2 と同じ依存構造のままだった。
  • 規制対応を後回しにして停止:金融商品的な性格を持つトークンを国内向けに販売してしまい、後から規制当局・銀行から指摘を受けて事業継続が困難になった事例。「Web3 だから規制の外」という前提が事業を直撃した。
  • 鍵管理を社長個人に集中させて事業停止リスク:事業用ウォレットの秘密鍵を経営者個人のスマホに置き、退任・端末紛失で資産・契約・ドメインへのアクセスが一時不能になった例。マルチシグや業務継続計画を組み込んでいなかったことが致命傷になった。
  • 「投機目的のユーザー」だけが集まったコミュニティ:本業サービスのファンではなく、トークン値上がりを狙うユーザーだけを集めた結果、価格下落と同時に離脱し、コミュニティが空洞化。Web3 で集まるユーザー層をどう設計するかが、長期成否を分けた。

成功と失敗から学べること

共通するのは、「Web3 を導入したこと自体は事業価値ではない」という点です。成功している事業者は、Web3 を「目的」ではなく「既存事業の不便を解消する手段」として位置付けています。個人も同様で、ウォレットを「投機の窓口」ではなく「自分の資産と ID を持ち歩く道具」として捉えた人ほど、Web2 と Web3 の使い分けがうまくできています。

Web3 が向いている領域・向いていない領域

Web3 は万能ではありません。次のような特性を持つ領域では、Web3 のメリットが大きく出ます。

  • 越境送金・少額決済・マイクロペイメント
  • クリエイター・ファンの直接的な経済関係
  • 会員・所有・投票などの「権利」をプログラムで表現したい領域
  • 検閲耐性・記録の永続性が重要なドキュメント・記事
  • 国を跨ぐコラボレーション・分散組織(DAO)

一方、次のような領域では、無理に Web3 化すると UX もコストも悪化します。

  • 大量の高頻度トランザクションが必要な業務系処理(在庫管理など)
  • 強い個人情報保護が必要で、オンチェーン公開が望ましくない領域
  • 既存の銀行口座・カード決済で十分にカバーされている国内 B2C 決済
  • サービス提供者が責任を負わなければならず、「コードが法」の発想と相性が悪い領域

「すべてを Web3 にする」のではなく、「どこを Web3、どこを Web2 のままにするか」の境界設計こそが、現実の事業設計の中心になります。

2026年5月時点の Web3 の現在地

2026年5月時点では、Web3 を取り巻く状況は以下のように整理できます。

  • Ethereum はメインネットの安定運用と Layer 2 連携が定着し、ガス代の高騰問題は実用上、ほぼ解消されつつある。
  • ステーブルコインは越境決済・B2B 送金の現実解として定着し、事業者がオフチェーン会計と組み合わせて運用する事例が増えている。
  • 各国でステーブルコイン規制が整備され、「規制対応された Web3」を事業として組み込める環境が広がった。
  • NFT は投機的なバブルを越え、会員証・チケット・証明書としての実需に移行。
  • Account Abstraction とパスキー連携により、「Web3 を意識せず使える Web3」がエンドユーザーに広がりつつある。
  • 一方で、過度な期待を寄せた一部のトークンプロジェクトは整理が進み、残ったプロジェクトが地に足のついた事業へ移行している。

「Web3 はもう終わった」と言われた時期もありますが、その間にインフラ・規制・UX は静かに整い、今は「派手さは減ったが、実用度は最も高い」段階に入っています。

マイクロファンドのサービスとの関係

マイクロファンドは、Web3 と既存事業のつなぎ目を実務として整える支援を行っています。個人・小規模事業者が Web2 から Web3 へ「実用」レベルで移行するためのサービスを提供しています。

個別の状況に応じて、どこから Web3 化するか・どこは Web2 のままで良いかを一緒に整理していけますので、ご関心がある方は各サービスをご覧ください。

参考文献

本記事は、以下の権威ある一次情報を参照しています。実際の判断にあたっては、最新の公式情報をご確認ください。

  • Satoshi Nakamoto「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」(2008年)
  • Gavin Wood「Ethereum: A Secure Decentralised Generalised Transaction Ledger」(Yellow Paper)
  • Ethereum Foundation 公式ドキュメント(ethereum.org)
  • W3C「Decentralized Identifiers (DIDs) v1.0」勧告
  • EIP-137(ENS)/EIP-4337(Account Abstraction)/EIP-3668(CCIP Read)などの Ethereum Improvement Proposals
  • 欧州連合「Markets in Crypto-Assets Regulation(MiCA)」
  • 日本の資金決済に関する法律および金融商品取引法
  • 金融庁・国税庁の暗号資産に関する公表資料
  • Tim Berners-Lee による Solid プロジェクトおよび関連論文

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まとめ

Web2 は「読み書きはできるが、所有はプラットフォームが握る」Web、Web3 は「読み書きに加えて、ユーザー自身が所有を取り戻す」Web です。Web2 の問題点(プラットフォーム依存・凍結・データ偏在・越境の壁・検閲)に対し、ブロックチェーン・スマートコントラクト・ウォレット・分散型 ID といった技術スタックが順番に整い、いまの Web3 が形になりました。

「Web3 を理解する」ことと「Web3 を動かす」ことの間には大きな差があります。個人はまず自分のウォレットで少額を動かしてみる、事業者はまず自社の何を Web3 化したいかを言語化し規制と税務をセットで設計する、という地味な一歩から始めるのが結局のところ最短ルートです。

本記事は2026年5月14日時点の情報に基づいています。規制・料金体系・各サービスの仕様は変更される可能性があるため、実際の意思決定にあたっては、各サービス・規制当局の最新情報も合わせてご確認ください。