仮想通貨(暗号資産)の法人口座と個人口座は何が違う? 移動平均法もあわせて解説

この記事について

仮想通貨(暗号資産)を扱っていると、いつか必ず迷うのが「これは個人でやるべきか、それとも法人(会社)でやるべきか」という問題です。同じように売買していても、個人口座と法人口座では、税金の仕組みそのものが違います。

この記事は、個人口座と法人口座で何がどう違うのかを、確定申告の準備という視点でやさしく整理したものです。あわせて、確定申告のときに必ず関わってくる取得原価の計算方法(移動平均法と総平均法)についても、図を使って具体的に説明します。

筆者(マイクロファンド)は、暗号資産で自分の資金を実際に動かし、その利益について確定申告も経験してきました。本記事は、「そのうち考えればいい」と後回しにしていたら、確定申告の直前になって計算方法の選択に慌てたという自分自身の体験もふまえて書いています。情報は 2026年7月時点 のものです。

この記事の対象読者

  • 暗号資産(仮想通貨)の取引が増えてきて、法人化を考え始めた方
  • 個人と法人で税金がどう違うのか、まずざっくり掴みたい方
  • 確定申告に向けて「取得原価の計算方法(移動平均法・総平均法)」を理解しておきたい方

この記事は全文無料です。専門用語はできるだけ避けて説明しますが、最終的な判断は個別の事情で変わります。本記事は一般的な仕組みの解説であり、具体的な申告や法人化の判断は国税庁の情報や税理士など専門家に確認してください。

結論:個人と法人は「別の税金のルール」で動いている

先に結論からです。個人口座の利益は『雑所得』として総合課税(累進で最大およそ55%)、法人口座の利益は『会社の所得』として法人税など(実効でおよそ30%前後)で課税されます。同じ暗号資産の利益でも、入口が個人か法人かで、まったく別のルールが適用されるのです。

さらに、いつ課税されるかも違います。個人は「売った・他の暗号資産に交換した・決済に使った」ときだけ課税されますが、法人は売っていなくても期末(決算日)の時価で評価される場合があります。まずは全体像を図で見てみましょう。

仮想通貨(暗号資産):個人口座と法人口座の違い個人口座利益は「雑所得」→ 総合課税税率:累進(最大およそ55%)課税は「売った・交換した・使った」タイミングだけ(保有中は非課税)損失は他の所得と相殺できない翌年への繰越も原則できない取得原価の計算:総平均法(既定)/移動平均法(届出)確定申告:自分で行う👉 まずはここから始める人が多い法人口座利益は会社の所得 → 法人税など税率:ほぼ一定(実効でおよそ30%前後)売っていなくても期末に時価で評価される場合がある(要件に注意)損失は他の事業の利益と相殺できる赤字(欠損金)は翌期以降へ繰越可経費に入れられる範囲が広い(役員報酬・設備・通信費 など)申告:法人決算・法人税申告が必要取引が大きくなると検討する選択肢
図1:個人は「雑所得・総合課税」、法人は「会社の所得・法人税」。仕組みそのものが違う

個人口座 ― 雑所得・総合課税、課税は「利益を確定したとき」だけ

個人が保有する暗号資産を売却・交換・決済に使って得た利益は、原則として『雑所得』に分類され、総合課税の対象になります。給与など他の所得と合算され、所得が多いほど税率が上がる累進課税で、住民税などを含めると最も高い層で実質およそ55%になります。

個人口座の特徴を整理すると、次のとおりです。

  • 保有しているだけでは課税されない:値上がりしても、売る・交換する・使うまでは利益が確定せず、税金もかからない。
  • 損失の救済が少ない:暗号資産の損失を、給与など他の所得から差し引くことは原則できず、翌年への繰越しも原則できない。
  • 経費にできる範囲が狭い:取引にかかった手数料など、直接関係する費用に限られやすい。
  • 申告は自分で:1年分の取引を自分で集計して確定申告する。

手軽に始められる反面、利益が大きくなるほど税率が重くなり、損失には冷たい――これが個人口座のいちばんの特徴です。

法人口座 ― 法人税など、売っていなくても期末に評価されることがある

会社(法人)の名義で暗号資産を扱うと、その利益は会社の所得として、法人税・地方税などの対象になります。利益の大小にかかわらず税率がほぼ一定で、実効税率でおよそ30%前後。個人の累進(最大およそ55%)と比べると、利益が大きい人ほど法人のほうが軽くなりやすいのがポイントです。

法人口座には、個人にはない特徴があります。

  • 損失を活かせる:暗号資産の損失を他の事業の利益と相殺でき、赤字(欠損金)は翌期以降へ繰り越せる。
  • 経費の幅が広い:役員報酬・設備・通信費など、事業に必要な費用を幅広く経費にできる。
  • 期末の時価評価に注意:保有し続けているだけでも、決算日の時価で評価され、含み益(含み損)に課税されることがある。ただし一定の要件を満たす継続保有分は評価の対象外とする扱いもあり、ルールは近年見直しが続いている。
  • 手間とコストがかかる:法人の設立費用、毎年の決算・法人税申告、税理士への報酬などが必要になる。

つまり法人は、税率と損失の扱いでは有利になりやすい一方、『売っていなくても課税されうる』『運営コストがかかる』という注意点を抱えています。取引の規模がまだ小さいうちは、法人化のコストが利益を上回ってしまうこともあります。

どちらを選ぶかの目安(2026年7月時点)

ざっくりした目安として、利益がまだ小さいうちは個人、継続的に大きな利益が見込めるようになったら法人を検討、という流れが一般的です。ただし、期末の時価評価や運営コストの影響は事業内容によって大きく変わります。法人化の判断は、必ず税理士など専門家に相談してから行ってください。

確定申告の準備で外せない「取得原価の計算方法」

個人・法人どちらでも、利益を計算するには「その暗号資産をいくらで手に入れたか(取得原価)」を決める必要があります。同じ暗号資産を何回かに分けて、しかも違う値段で買っていると、「じゃあ売った分の元値はいくら?」がはっきりしません。そこで登場するのが移動平均法総平均法という2つの計算方法です。

取得原価の計算方法 ― 移動平均法と総平均法例:1BTCを100万円で購入 → もう1BTCを300万円で購入 → 1BTCを売却移動平均法買うたびに平均単価を計算し直す①100万で1BTC → 平均100万円②300万で1BTC買い足し→ (100万+300万)÷2=平均200万円売却時の取得原価=その時点の200万円👍 その時々の実態に近い👀 取引ごとに計算が必要で手間使うには税務署への届出が必要総平均法1年分をまとめて平均する年間の購入総額 ÷ 年間の購入数量(100万+300万) ÷ 2BTC=平均200万円売却時の取得原価=年間平均の200万円👍 計算がシンプルで間違えにくい👀 年末まで単価が確定しない個人が届出をしない場合はこちら(既定)※ どちらを選ぶかで各年の利益額(=税額)が変わることがある。一度選んだら原則そのまま続ける
図2:同じ取引でも「いつの平均で原価を出すか」が違う。個人の既定は総平均法、移動平均法にするには届出が必要

移動平均法 ― 買うたびに平均単価を計算し直す

移動平均法は、暗号資産を買い足すたびにその時点での平均単価を計算し直す方法です。図2の例なら、100万円で1BTC、次に300万円で1BTCを買った時点で平均単価は200万円。その後に売れば、取得原価はその時点の200万円として計算します。取引のたびに「今の平均はいくらか」がわかるため、その時々の実態に近く、利益の見通しも立てやすいのが長所です。一方で、取引ごとに計算が必要で手間がかかります。

個人が移動平均法を使いたい場合は、あらかじめ税務署へ届出をしておく必要があります。届出をしないと、次の総平均法が自動的に適用されます。

総平均法 ― 1年分をまとめて平均する(個人の既定)

総平均法は、1年分の購入をまとめて平均する方法です。「年間の購入総額 ÷ 年間の購入数量」で1つの平均単価を出し、その年の売却すべてに使います。計算がシンプルで間違えにくいのが長所ですが、年末まで単価が確定しないため、期中に正確な利益を把握しづらいのが短所です。

個人の場合、届出をしなければ総平均法が既定(自動適用)になります。つまり、多くの人は意識しないまま総平均法で計算していることになります。

ここが確定申告の準備で大事なポイント

  • どちらを選ぶかで、その年の利益額(=税額)が変わることがある。特に相場が大きく動いた年ほど、差が出やすい。
  • 一度選んだ方法は、原則そのまま続けることになる(コロコロ変えられない)。だからこそ最初の選択が大切。
  • 移動平均法にしたいなら、事前の届出が必要。「今年から移動平均で」と後から思っても、届出がなければ総平均法になる。
  • 取引回数が多い人ほど、手計算は現実的でない。取引履歴(CSVなど)を普段からダウンロードして残しておくことが、確定申告の準備そのもの。

失敗例と成功例

失敗例:計算方法を意識せず、確定申告の直前に慌てる

ある方は、複数の取引所で暗号資産を頻繁に売買していましたが、取得原価の計算方法を意識したことがありませんでした。確定申告の時期になって集計を始めたものの、取引履歴があちこちに散らばり、どの単価で計算すればいいのか分からなくなったのです。「移動平均法のほうが自分の実態に合っていた」と後で気づいても、届出をしていなかったため総平均法しか使えず、思っていた金額と違う税額に驚く――これはよくある失敗です。原因は相場ではなく、準備不足と計算方法の理解不足にあります。

成功例:入口(個人/法人)と計算方法を先に決め、履歴を貯めておく

一方、仕組みを理解している人は先に手を打ちます。取引の規模から「今は個人、利益が安定して大きくなったら法人を検討」と方針を決め、取得原価も自分の取引スタイルに合う計算方法(総平均法か移動平均法か)を先に選択。移動平均法にするなら早めに届出を済ませます。そして各取引所の履歴を毎月ダウンロードして1か所にまとめておく。こうしておくと、確定申告の時期に慌てることがなく、正しい利益を落ち着いて計算し、堂々と納税できます。

まとめ

  • 個人口座=利益は雑所得・総合課税(累進で最大およそ55%)。売る・交換する・使うまで課税されないが、損失の救済は少ない。
  • 法人口座=利益は会社の所得・法人税など(実効でおよそ30%前後)。損失を活かせて経費の幅も広いが、期末の時価評価や運営コストに注意。
  • 目安は「利益が小さいうちは個人、大きく育ったら法人を検討」。判断は専門家に相談を。
  • 取得原価の計算は移動平均法と総平均法の2つ。移動平均法は買うたびに平均を計算し直し(届出が必要)、総平均法は1年分をまとめて平均(個人の既定)。
  • どちらを選ぶかで税額が変わることがあり、原則あとから変えられない。取引履歴を普段から残しておくことが確定申告の準備そのもの。
  • 制度は毎年見直される。申告時はその時点の最新ルールを国税庁の情報や専門家で確認する。

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# 確定申告の準備をしておく
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