この記事について
暗号資産(仮想通貨)で利益が出ると、次に気になるのが税金です。そこで必ず出てくるのが「総合課税」と「申告分離課税」という2つの言葉。この記事は、この2つの課税方式が何が違うのか、そして仮想通貨(暗号資産)の利益はどちらに入るのかを、できるだけやさしく整理したものです。
筆者(マイクロファンド)は、暗号資産で自分の資金を実際に動かし、その利益について確定申告も経験してきました。本記事は、「税率は約20%くらいだろう」と思い込んでいたら、実際はそうではなかったという自分自身のヒヤッとした体験もふまえて書いています。情報は 2026年7月時点 のものです。
この記事の対象読者
- 暗号資産(仮想通貨)で利益が出て、確定申告が必要になりそうな方
- 「暗号資産の税金は一律およそ20%」と聞いて、そのつもりでいる方
- 総合課税と申告分離課税の違いを、まずはざっくり掴みたい方
この記事は全文無料です。専門用語はできるだけ避けて説明しますが、最終的な税額の判断は個別の事情で変わります。本記事は一般的な仕組みの解説であり、具体的な申告は国税庁の情報や税理士など専門家に確認してください。
結論:仮想通貨(暗号資産)は「総合課税」
先に結論からです。個人が持つ仮想通貨(暗号資産)の利益は、原則『雑所得』として『総合課税』の対象になります。一律およそ20%で済む『申告分離課税』ではありません。
ここを取り違えると、「20%だと思っていたのに、実際はもっと高かった」という資金計画の失敗につながります。まずは2つの方式の違いを押さえましょう。
総合課税とは ― 他の所得と「合算」して累進で課税
総合課税は、その名のとおりいろいろな所得を合算(総合)して課税する方式です。たとえば会社員なら給与、副業の報酬、そして暗号資産の利益(雑所得)などをすべて足し合わせ、その合計額に対して税金を計算します。
ポイントは「累進課税」である点です。累進とは、所得が大きくなるほど税率も段階的に上がっていく仕組みのこと。所得税だけでも 5% から始まり、所得が増えるにつれて 10%・20%……と上がり、最も高い段では 45% になります。ここに住民税(およそ10%)と復興特別所得税が加わるため、いちばん高い層では、合わせて実質およそ55%の負担になります。
図2のように、暗号資産の利益は給与などの上に『上乗せ』される形で合算されます。そのため、もともとの給与所得が高い人ほど、暗号資産の利益に高い段の税率がかかりやすくなります。同じ利益額でも、その人の他の所得しだいで実際の税負担が変わる――これが総合課税の特徴です。
申告分離課税とは ― その所得だけを「分けて」一律で課税
もう一方の申告分離課税は、特定の所得だけを他と切り離し(分離し)、決まった一律の税率で課税する方式です。代表的な税率はおよそ20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)で、利益がいくら大きくても、この税率は変わりません。
対象になるのは、一部の上場している投資商品の売却益や分配金、先物取引の利益、不動産を売ったときの利益(一部)など、あらかじめ法律で決められたものに限られます。こうした対象どうしであれば、損失を利益と相殺したり、その年に使いきれない損失を翌年以降に繰り越したりできる制度が用意されているものもあります。
「利益が大きくても税率が一律」「損失を繰り越せる場合がある」――この2点だけを見ると、申告分離課税は投資家にとって有利に見えます。だからこそ「暗号資産もこの一律20%なのでは?」と誤解されやすいのですが、現時点ではそうではない、という点が重要です。
なぜ仮想通貨(暗号資産)は総合課税なのか
個人が保有する暗号資産を売却したり、他の暗号資産に交換したり、決済に使ったりして得た利益は、原則として『雑所得』に分類されます。そして雑所得は、総合課税の対象です。申告分離課税の対象として法律に列挙されていないため、一律およそ20%の分離課税は適用されません。
雑所得として総合課税になることで、実務上つぎのような違いが生まれます。
- 税率が累進:給与など他の所得と合算され、所得が多いほど税率が上がる(最大およそ55%)。
- 他の所得と相殺できない:暗号資産で損失が出ても、給与所得などから差し引くことは原則できない。
- 翌年に繰り越せない:その年の損失を、翌年以降の利益と相殺するための繰越しは原則できない。
- 年内の通算は可能:同じ年のなかで、暗号資産どうしの利益と損失を合算することはできる。
つまり、暗号資産は「利益が大きいほど税率が上がり、損失には救済が少ない」という、投資家にとってはやや厳しめの扱いになっている、というのが現状です。
制度は変わる可能性がある(2026年7月時点)
暗号資産の課税を、一律およそ20%の申告分離課税へ見直そうという議論は、以前から続いています。ただし2026年7月時点では、まだ総合課税(雑所得)のままです。税制は毎年見直されるため、実際に確定申告をするときは、その時点の最新ルールを国税庁の情報などで必ず確認してください。
失敗例と成功例
失敗例:「税金は20%くらい」と思い込み、納税資金が足りなくなる
ある会社員の方が、給与のほかに暗号資産で大きな利益を出しました。「暗号資産の税金はだいたい20%」という話をどこかで聞いていたため、利益の多くを生活費や次の投資に回してしまいました。ところが実際は総合課税。給与と合算されて累進税率が適用され、想定していた20%をはるかに超える税額になり、確定申告の時期になって納税資金が手元に足りず慌てる――これは非常によくある失敗です。原因は相場ではなく、課税方式の思い込みにあります。
成功例:総合課税を前提に、税金を先に「よけておく」
一方で、仕組みを理解している人は動きが違います。暗号資産で利益が出た時点で「これは総合課税で、自分の所得だと高い段の税率がかかる」と考え、利益の一部をあらかじめ納税用として別の口座によけておきます。さらに、利益を確定させるタイミングを年をまたいで分けるなど、1年に所得が突出しすぎないよう調整することも検討します。こうしておくと、確定申告の時期に慌てることがなく、手元資金を守りながら、堂々と納税できます。
まとめ
- 総合課税=他の所得と合算し、累進(所得が多いほど高い)で課税。最大およそ55%。
- 申告分離課税=その所得だけを分けて、一律およそ20.315%で課税。
- 仮想通貨(暗号資産)は『雑所得』として総合課税。一律20%の分離課税ではない。
- 暗号資産の損失は、他の所得と相殺できず、翌年への繰越しも原則できない(年内の通算は可能)。
- 「税金は20%くらい」という思い込みが、納税資金不足の失敗を生む。総合課税前提で先に税金をよけておくのが安全。
- 制度は変わり得る。申告時はその時点の最新ルールを国税庁の情報や専門家で確認する。
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